「おっはよ~!」

私の声が、シンとした教室に響いた。

誰も答えてくれないことは、百も承知。

今のは、発声練習でーす!

水の入ったズックを、キュッポキュッポ鳴らしながら席につこうとすると、ぶーちゃんが私の机の前に立っている。

「あ、ばんびちゃ・・・」

振り向いたぶーちゃんは、明らかに動揺していた。私の机の何かを、隠すように肩をいからせて立っている。

けれど、いくらぶーちゃんがぽっちゃりしてても、私の机を隠しとおせるほどではない。

「?」

回り込んで私が自分の机を見ると・・・

油性マジックで大きく、「責任取れ」と書かれていた。

やかんにスズメを入れた責任を取れ、ということかな?

私じゃないってば。

「あらまー」

中学の時も机に落書きされたけれど、「お前の母ちゃんデベソ」みたいなもっと幼稚なワードだったな。さすが、高校生は書くことがオトナだね!

「なかなか立派な字だねぇ。習字のときにお手本にできそう。私、『責任』って漢字苦手だったんだよね!こう書いといてくれてると、漢字テストのときも助かるわあ!あ、でもカンニングになっちゃうから、ご好意はありがたいけどやっぱり消さないとね」

ぶーちゃんは、私の反応に絶句している。