・
・
・
気づいたら、部室からは誰もいなくなっていた。
ゆっくりと頭を上げると、頭の上に残っていた粉がまとまって、首筋から服の中に入っていった。
日はとうに暮れ、部室は電気もついてないので真っ暗だったけれど、不思議と怖くない。
むしろ、誰もいないことに安堵感さえ覚えた。
とりあえず今は、誰からも攻撃される怖れはない。
さて、これからどうしよう。
体中、松ヤニの粉だらけだ。
シャワーを浴びたいけれど、もう鍵がしまっていて使えないだろうし。
とりあえず、自分の状況を確認しよう。
立ち上がって、電気をつける。
鏡に、自分の姿が映った。
髪の毛には、べったりと白い粉が固まりになって付いている。
叩いて固まりを落としたけれど、松ヤニが入っているロジンバッグの粉はギシギシして白残りしていて、このままで電車に乗るのはちょっと無理だ。
それに、顔・・・。
目と鼻穴以外の顔が、真っ白だ。
誰かが、「小梅太夫」と言っていた理由が分かった。
ほんとに、小梅太夫みたいだ・・・
自分でも気づかないうちに、自然に前向きスイッチが入ったみたいだ。
なんだかおかしくなってきて、自分で自分のことを見て、笑った。
そう、私はお母さんとの約束があるから。
これくらいの事で、負けるわけにはいかない。



