夢見るゾンビ


「あまりにもキモイので今日は断髪式をやりまーす」

誰かが、裁ちばさみを持っている。

「てか、誰が切るの?」

「触りたくないんですけどリアルに」

はさみは、私の目の前に放り投げられた。

「自分でやれよ!」

黙ってはさみを見ていると、髪を掴まれて無理やり起こされる。

「早く切ってよ!その汚い髪目の毒なんで」

「公害だよね」

「切ーれ、切ーれ」

切りたくなかった。

中学生になったら三つ編みおさげでしょ!そう思って伸ばした、大事な髪の毛だった。

毎日丁寧に洗ってるから、汚くなんかない。ゴミ箱をかぶせられた後の今だって、昨日使ったシャンプーの、フルーツシトラスのいい香りがほのかにしていた。

「早くやれよ!また抜くぞ」

「はげるぞ」

「ハゲと切るのと、どっちがいいんだ?」

どっちもいやだ・・・

私はそう思ったけれど、引っ張られる髪の毛の悲鳴に耐えかねて、髪の毛にはさみを入れた。

みんなの歓声が上がった。