粉が舞って、ろくに息もできない。
それでも呼吸をしないと生きていけないから息を吸ったら、思い切りむせた。
生理現象として、涙が出た。
一応断っておくけれど、悲しくて涙を流したわけじゃない。
悲しいを通り越して、心は麻痺していた。
周りのものは、もう何も聞こえない。
何も見えない。
何も感じない。
ただ一つ感じたものといえば、日の当たらない部室の、汗とカビが混ざった匂い。
暗い暗い穴の底に落ちていくような感覚の中で、その匂いが私の脳裏に昔の記憶を呼び覚ました。
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「逃げ切れると思うなよ!」



