由奈が、どこかから使い古しのロジンバッグを持ってきた。
ロジンバッグというのは、ピッチャーが滑り止めのためにつける、粉の入った袋のことだ。
それを、私の頭の上でバフバフ振り出した。
白い粉が降ってきて、コンクリートの床が私の輪郭を避けて白くなっていく。
「ねぇ、いっぱい落ちてるよ!ちゃんと全部拾ってね!」
笑い声とともに、キャー、と頭上で黄色い声が上がった。
同時に、頭にずしっと重みを感じる。
「これ、穴が開いてるし!」
少し頭を傾けたら、髪の毛の間から大量に粉が降ってきて視界をふさいだ。
みんながキャーキャー言いながら、私から離れた。
「ちょっ、ばんびがエクレアみたいになってるし!」
「ちがう、小梅太夫だよ!」
「ギャハハ!そっくりすぎてヤバイんですけど!!」
辛うじて開けた薄目から、恵梨と川島さんがお腹を抱えて笑っているのが見えた。



