結婚の報告をしに昴の実家に行った日から、もう三ヶ月が経つ。


なのに、昴は一向に実家付近に近寄らないし、笹ちゃんにも逢おうとしない。






俺は、笹に酷いことしたし。
芙美にももう、寂しい思いをさせたくないから。

俺が幸せにできるのは芙美だけだから。



あの日、そう言ってくれた昴は泣きそうだったから。
あたしは何も言えなかった。






あたしにはわからない。


昴と笹ちゃん。それから慶太くんがどんな子ども時代を過ごしていたのか。





だけど、昴には幸せになって欲しいと思う。
あたしをほんとうに幸せにしようと思うなら、まずは自分が幸せじゃなきゃ何も始まらないと思うから。






「昴ちゃん。」






「ん?」




昴の視線が植物から私に移る。



昴ちゃん、


そう呼ぶ時は大事な話だって合図。






七月の夜は少し切ない香りがした。