「三成様」


私は城に戻って早々に話しかけてみた。


「なんだ」


「あの本、読みました?」


「これのことか」


三成様は文机の上にあった例の歴史小説を手に取る。


「読んだも何もあったもんじゃない」


やっぱり活字体だからダメだったのか、と落胆しながら返された小説を何気なく開いてみる。


「!」


思わず目を疑った。


どのページを開いても真っ白なのだ。


表紙には『散華の時~戦国乱世物語~』とタイトルがあるのに。


しかも、ここに来たばかりの時はちゃんと文章があった。


「そんなバカな!」


どういうこと?


いざという時に声が出なくなったり、本の文章が消えたり、私には何か神のような絶大な力が働いているように思えた。


そう考えると恐ろしい。


しかし、逆にチャンスかもしれないと思った。


三成様が負けるという内容の文章も消えたということは、史実通りに事が運ぶとも限らないのではないだろうか。


ならば状況次第で歴史を覆せるかもしれない。


…うん。


私が歴史を変えてみせる。


そして三成様も左近様もみんな助けよう。