ひなたさんに問い詰められている間にまた雪が降ったらしい。


朝、身支度を整えて廊下に出ると、城の人達が雪かきをしている。


私は現代にいた頃、雪がそれほど降らない地域に住んでいたので珍しがって様子を見ていた。


「はっ」


するといきなり屋根から誰かが飛び降りてくる。


「うおっ」


思わず変な声を出してしまった。


「あ、おはようございます。またお会いしましたね」


ニッと笑う左近様の顔がそこにあった。


「おはようございます。雪かきですか?」


「そうです。早くに目が覚めて暇なものですから」


そう言って足に付いた雪をぱっぱと払っている。


「あ、こっちにも付いてますよ」


私は彼の元に駆け寄り、肩の上の雪を払った。


「ありがとうございます」


「…」


手に付いた雪を見てふと思う。


このまま彼に寄り添う雪になって、そしてそっと溶けてしまいたい。


かなわないなら、いっそ…。


「ダメです」


いきなり左近様に手を握られる。


「え?」


「そんな綺麗な白い手で雪なんて触ったら。凍瘡(とうそう)になったらどうするんです」


ああ、この人は霜焼けの心配をしてくれているんだ。


気付いてないんだろうな。


そうやって何の疑いもなく私を心配して嬉しい言葉をかけてくれる。


その無防備な優しさを目の当たりにするたび、惹かれていって逆につらくなるってこと。


いっそのこと雪になりたい。


左近様の手の温かさを感じながら、私はもう一度心の中で思った。