ある夜、私がお寺の入口に立って空を見上げていると、ふいに弦楽器の音がした。
「?」
法春さんが奏でているのだろうか。
その音色に惹かれるように私はお寺の中へ入っていく。
「あ」
左近様が部屋で月を見ながら琵琶を奏でていた。
「おや」
私に気付いた彼は演奏する手を止めて微笑んでくれる。
「左近様、その琵琶は?」
「法春さんのものです。昔ちょっといじったことがあったんで、懐かしくなって借りちまいました」
「お上手ですね」
すると左近様は自嘲するようにハッと笑った。
「まだまだです。殿には下手だと言われましたよ」
「そうなんですか?」
「10年以上前の話ですがね。あの方は本当に琵琶がお上手だった」
「知らなかったです。聴きたかったなあ」
「ええ。聴かせたかったですよ」
左近様はそう寂しそうに笑う。
私は彼の横に行き、座って言った。
「?」
法春さんが奏でているのだろうか。
その音色に惹かれるように私はお寺の中へ入っていく。
「あ」
左近様が部屋で月を見ながら琵琶を奏でていた。
「おや」
私に気付いた彼は演奏する手を止めて微笑んでくれる。
「左近様、その琵琶は?」
「法春さんのものです。昔ちょっといじったことがあったんで、懐かしくなって借りちまいました」
「お上手ですね」
すると左近様は自嘲するようにハッと笑った。
「まだまだです。殿には下手だと言われましたよ」
「そうなんですか?」
「10年以上前の話ですがね。あの方は本当に琵琶がお上手だった」
「知らなかったです。聴きたかったなあ」
「ええ。聴かせたかったですよ」
左近様はそう寂しそうに笑う。
私は彼の横に行き、座って言った。