「結婚してくれないか、俺と」


「え!?」


プロポーズされたのは、ホワイトデーだった。


いきなりでびっくりしたけど、もっと先生と一緒にいたい。


1ヶ月に1回しか会えないなんてあまりにも少ない。


毎日テーブル越しに先生を見たい。


そんな気持ちはあった。


「もちろんです。よろしくお願いします」


「本当に俺なんかでいいんだな?お前は未来ある若者だろ?」


そんな年寄りみたいなことを言わなくても。


「先生じゃなきゃ嫌なんです。もっと一緒に過ごしたいんです」


「水橋…」


先生は私の手を握った。


私も握り返す。


この時、私は大学の卒業式を終えたばかりでフリーターの22歳。


先生は47歳になっていた。


式は8月1日に挙げよう、と先生は言ってくれた。


その日は私の誕生日だ。


さて、結婚が決まった後が大忙し。


まずは私の実家に行き、先生にあのセリフを言わせる。


「お義母(かあ)さん…娘さんを私に下さい!」


「あっはっはっはっ」


先生が言い終わったとたん、母は大爆笑した。


「ごめんなさい。でもおかしいわ。わたしの元夫が「お義母さん…娘さんを私に下さい!」だなんて」


私達はただ苦笑する。


「まぁ、不束な娘ですがよろしくお願いしますわ」


交渉成立。


さて、次は…。


いよいよ先生のご両親にご挨拶だ。


それを考えると、心臓が大きく脈打った。