そんなことをしばらく考えていると、ケータイがけたたましく鳴った。


ディスプレイに映し出されていたのは先生の名前。


メールのようだ。


内容は以下の通りだった。


『久しぶりだな。こっちでは雪のクリスマスイブだ。そっちはどうだ?』


ふむふむ。


実にシンプルだ。


先生らしいな。


私はこう返信することにした。


『お久しぶりです。こっちでも雪が降っています。珍しく結構積もりそうです』


「送信しました」という白いゴシック体の文字を見てからケータイをパタンと閉じた。


先生からメールをくれるなんて嬉しい。


私は子供のように喜んでいた。


出来るならこの雪の下を飛び出して先生に会いに行きたい。


無理だけど、会いたい。


あのキラキラした笑顔に。


また、思い出す。


私を呼ぶ特徴のある低い声。


「会いたいよ…」


想っても想ってもケータイの向こうの先生には届かない。


先生はただメールをくれるだけ。


私はきっとただのメール相手。


雪はそんな私に構うことなく、窓から見える赤い屋根を薄く覆っていた。


またケータイが鳴る。


「…!」


内容を見た私は驚いた。


まさか先生がこんなことを言うなんて。


『そうか。それにしてもこの雪、お前と見たかったな』