「ああ。野崎、今日日直だろ?担任が呼んでた」

「ええ」

「俺に嫌そうな顔されても。行ってこいよ、職員室」

「……」

「あたしを見ないで。手伝わないからね」

「…行ってきます」




溜息をまたひとつ吐き出してから、がたんと席を立った。

背中を向けると、背後で「頑張れよー」棒読みの夏樹君の声がした。

とりあえず無視で。
面倒だな、なんて思いながら足を運んだ。





***


「これ、資料室な」

「…先生、私、腕力ないんですけど」

「じゃあ運びながら腕力つけろ」

「鬼畜…!」




案の定、使い手だった。職員室まで行けば、差し出された段ボール。

中にはもう使わなくなったらしい資料が入っていた。




「…し、資料室まで、ですか」

「ああ、資料室まで。階段上ったらすぐだぞ。腕力つけられるしラッキーだな!野崎!」

「先生がラッキーなだけですよね」




これ持って階段とか、無理だ。今日はアンラッキーらしい。

溜息をまたひとつ漏らすと、「…失礼しました」職員室を後にした。