「……、」 これ言っていいのか?思わず口を固く結んで静止した。 言ったら言ったで、郁也にそう思われそうだ。…いや、…正直言うと、そう言ってくれたら、嬉しかったりする。口が裂けても言えないけど。 「…夏樹がなに?」 「え、えっと」 放課後の帰り道は、あまり人気がない。駅まで行けばもうすこし賑やかになるだろう。 だけどそれまで、私が口を割らないわけにもいかない。 意を決して、ゆっくりと口を開いた。 「…な、夏樹君に、…昨日すごい腕力で抱きしめられたんだって」