「複雑だな」

「…え」




ふっと、笑われた。


夕日に侵食されて、もうじき夜に侵食されるのであろう教室は、相変わらずしんとしていた。

夕日に照らされた担任の笑みが、更に私の首を絞めるようで、クルシイ。




「…、」

「あ?どうしたよ、体調悪いのか」

「…べつに…」




視線を反らす。…というより泳がせた。机、自分の拳、時計、窓。慌ただしく視線をあちこちへ運んでく。


それにはなにも言わない彼は、「お前も辛いね」と、そんなことを言い出した。




「…え?」

「見てると可哀相になってくる」

「…、」




可哀相だなんて、郁也と付き合ってきた今までで一度も言われたことはなかった。


言われ慣れない【かわいそう】の5文字に胸がざわついた。

なにが、可哀相に見えるの?私、そんな態度していたんだろうか。可哀相だと思われるようなことを、していたの?


自分じゃ全くわからなくて。ただただ疑問に溺れてく。




「ああ、可哀相だよ。なにも知らないんだろ」

「知らない?」