「…だってお前全然覚えてないからさあ」

「…申し訳ないです」

「言っとくけど俺も暇じゃないんだからな」

「…存じております。はい」




けだるい声が耳に届く。そ、そんなに嫌なのか私に数学教えるの。

苦笑混じりに「すいません」即座に返した私。

それが面白くなかったのか、気に入らない様子で「お前さ」私に話しかけた。




「なんであいつと付き合ったの」

「…はい?」

「藤崎だよ、藤崎」

「…」




え、なんでここで郁也が出てくるんだろう。


それより――――なんで付き合ったのか、って?




「…いや、普通に…。付き合ってって言われた、から?」

「俺に聞くなよ」

「……言われたから、です」

「ふーん」




疑問符を取り外して再度言えば、特になんてことない様子で返ってきた言葉。

ふーんって。軽くないですか。ふーんって。




「…なんでですか?」




いきなり郁也の話題を出されるとは思ってなかったから、すこし驚いた。


なんで、いきなり?

疑問符を露にする私の問い掛けに、担任はあくまで軽く返してきた。




「藤崎ってどうも掴めない奴だから」