郁也は遠回しだ。 遠回しに、でも理解すると納得出来る屁理屈を言う。 頭の回転が速い証拠だ。私はそんな器用なこと出来ない。 「私じゃ無理なのかな。そういう職業」 「俺、高すぎる願望を持つ人間って不思議だと思うんだよね。だけど最初から諦めてる人間もどうかと思う」 「わかんないわ。郁也がなに言いたいのかわかんないわ」 「あたしもお手上げ」 「怜香、途中から参戦してたよね」 机上に、ごてん、頭を乗せた。やっぱり郁也は不思議だ。 掴みようのない雰囲気はいつも郁也の周りを行き来している。