だって。郁也って何考えてるのか、まるでわからないから。
聞くに聞き出せないし。




「郁也、なにがやりたいんだろう」




ぽつり、呟いてみる。
教室の窓から見える夕焼けがやけに目に染みる。

郁也は自分自身のことをあまり話したがらない。というより、話そうとしない。

なにが好きだとか、なにが嫌いだとか、一切話してこない。そういえば家族関連のことも聞いたことがない。


郁也って、思い返すと自分のことを、まるで何か分厚いもので覆うように隠しているようで。なかなかさらけ出してこない。




「俺に聞かれても答えられねえよ」

「それはわかってなすけど、」

「本人に直接聞いてみりゃいいじゃねえか」




そう言われて、思わず口ごもる。

そんな軽々しく言わないでほしい。
聞いたところで、彼が答えてくれる保障なんてないのだから。


そもそも、私に聞き出す勇気もないからそんな風に思ってしまうのだろうけど。