「ああ。真っ白だ。名前だけ書いて提出したんだよ、あいつは」
「……」
「お前も同じようなもんだったけどね。…まだ進路は決まらないのか」
そう尋ねられる。
進路。…この前郁也に話してみて、自分のやりたいことが少し見えた気がした。
いいかな。私がそれをやりたいと思うことが、可笑しいことじゃないのなら。
「…興味のある職業は、あるんですけど」
やってみたいと思う。
その通りに同じ道は歩めないと思うけど。あの人みたいに、私にはピアノは弾けないし、子供に上手く接することも出来ない。
だけど、
「…なんだよ、その職業は」
「…幼稚園教諭、です」
確かに、進路希望は白紙で提出した。
揺らいでたからだ。本当に、その紙に【母親と同じ道を歩みたい】と書いてしまって良いのか。
未知の自分が、その線を踏み越えてしまって良いのか。一人、ゆらゆらと不安定に揺れていたからだ。

