「…鈍ったな」
弾き終えたお父さんは、椅子から立ち上がりながら言った。
「…これ」
「由奈が弾いてた曲。佳奈なら聴いたことあると思ったんだよ」
「…あったよ」
「流石に弾いてないとぐちゃぐちゃだけどな」
そんなことなかった。
お母さんと全く同じ、というわけではなかったけど。
私じゃ弾けない。拍手でも送りたいくらいに、強く気持ちが伝わってきたピアノの音色。
未だに頬に伝ったままの涙を指先で拭う。
それを見たお父さんは苦笑しながら言った。
「…佳奈が悩んでるときは、ピアノを弾いてやれって由奈に言われてたんだ」
「…え」

