わかる。聴いたことが、ある。




「…お母さんが、弾いてた曲…」




ぱちぱちと瞬きを繰り返す。ごくりと生唾を飲み込む。



初めて聴かされたのは、…そうだ。あの日、幼稚園の教室だった。

鳥肌が立ったのは今でもはっきり覚えてる。




「……っ、」




未だに私には、お父さんのピアノが上手いのか下手なのかはわからない。

でも気持ちだけは、ひしひしと伝わってくる。



お母さんへの気持ちが、ひしひしと、肌にぶつかるように伝わる。

涙が、静かに頬を伝っていった。




「…、」




この曲は、お母さんが私に弾いたものだった。