ぎしりと音がなる。ピアノの下から引きずり出した椅子に腰掛けると、お父さんが鍵盤をひとつだけ指先で押した。



ぽーん、とどこか懐かしい音だった。




「下手でも笑うなよ。弾いてなかったんだから」

「笑わないよ」

「…佳奈なら聴いたことあると思うよ」

「…え?」




一言、私に言ってからお父さんが鍵盤を押した。



鍵盤の上で踊る指。

波に乗せられて耳まで届く音。

繊細なメロディーに、気迫の篭ったリズムを刻んでいく。




――――あ、




「――――っ、」




次に耳に届いた寂しげな音色に、ぴんときた。



この曲は――――、