【こんな人間になった】
そう言ったお父さんは、自分を投げ捨てるかのように、悲しく笑った。
「…由奈と会ったのが高校のとき。それから大学は違ったけど、こうしてまた繋がりが持てた」
お父さんの瞳がどこに向いているのかはわからないけど、
きっとお母さんのことだけを考えているんじゃないかな。わかりやすい、本当に。
「…由奈は高校のときはピアノ弾けなかったんだよ」
「え?」
「猫踏んじゃった、くらいしか弾けなかったんだよ。由奈は」
「…」
目を見開く。
お母さん、高校生の時はピアノ弾けなかったの?
「…なにそれ」
知らなかった。

