す、息を吸い込んだのはお母さん。
そっと開いた唇から零れた言葉。
「…真っ赤な血が広がって、悲鳴が聞こえた」
「、」
「…でも、やっとわかったんだよ。誰が一緒に逃げてるのかが」
「…、」
どくん、どくん。
嫌なくらい、心臓の音がはっきりと耳に届く。
どくん、どくん。
心臓が胸から飛び出してしまいそうなほどに、大きく揺すぶられている。
なんだか聞くのが怖い。聞いたらいけない気がする。
お母さんの、次の言葉。お母さんが言おうとしている、『お母さんと一緒に逃げていた人間』の名前を―――、
―――聞いたらいけない気がする。

