*** 困ったような笑みを浮かべたお母さんに連れられて、 車の助手席で揺らされながら着いた先は、たまにくる喫茶店だった。 扉を押し開けると、いつもと変わらない店内に、「いらっしゃいませ」とウエイトレスの声。 案内された席に着くと、注文もせずに出された水を喉に運んでから、お母さんは口を開いた。 「……いきなり、ごめんね」 からん、コップの中で氷が揺れて音をたてた。 それに目線を落とすことなく、お母さんを見つめた。 「…それは別に構わないけど、いきなりどうしたの」