「―――あ、本当ですか?」




言いながら、すこし焦ったようにお母さんは真っ黒なピアノから離れた。

ぎい、仕舞われる椅子に何故か視線が釘付けになっていた私。

お母さんに話し掛けられて我にかえった。




「――――佳奈、仕事だよ。行こう」




そう私に言ってから、

わざわざ言いにきてくれた隣のクラスを担当する先生に、




「すみません」




お母さんは笑いながら謝った。