「…ねえ、佳奈」
「なに?」
お母さんが私を呼ぶ。さっきと変わらず笑顔だけれど、その眉は寂しげに八の字になっていた。
いきなりふっと変わった表情に、自分の返事もどこか寂しさに濡れてしまう。
…どうしたのかな。
「…ううん、なんでもない」
「なにそれ」
きょとんとして返す。お母さんの表情はまだ暗いまま。
それに気付いているのだろうけど、
…隠そうとしてるんだろうな。わかりやすいお母さんは、どこまでもわかりやすく隠そうと言葉を濁す。
「…お母さん?」
どうしたんだろう。心配するよ、いきなりそんな表情をされたら。
微量の不安を感じて、そう呼んだ。だけどやっぱり彼女は暗いまま。

