「まだ小学三年生なのにね。佳奈は探偵みたい」
「探偵?」
「そう。…大きくなったら、人の心までわかっちゃうかもしれないね」
人の心?
首をこてんと傾げた。
ええ、無理だよ。私、探偵にはなれないや。
「私、探偵にはなれないよ。人の心はわかんないもん」
「わかんない?」
「わかっちゃ駄目だと思うなあ。なんとなく」
「そっか。佳奈は、優しいもんね」
「優しい?」
また首を傾げた。
ちらりと視線を遠くへずらせば、開いたままのリビングのドア。
リビングの中の窓、オレンジ色の空が見えた。
「…優しいよ。佳奈は」
お母さんの顔は、オレンジ色が邪魔して見えなかった。

