私の腕を引くと、怜香はずんずん足を進めてしまう。 「怜香?」 不安が込み上げてくる。その名前を呼ぶ。 「……」 だけれど、怜香からの返事はなかった。なにも言わない怜香はただただ足を動かす。 それに引っ張られるように私の足もついていく。ぐいぐいと、力強く引っ張られる。 怜香が、誰にも、私にさえも聞こえないような声で呟いた。 「―――あんたが、隠すからいけないんでしょ」 騒がしい教室の中に、怜香の言葉は誰にも届くことなく溶けてしまった。 私には聞こえなかった。