「…良いよ、なにも聞かないから」 「…え、」 「隈が出来てる理由も、指が震えてる理由も、今は聞かない」 「…っ」 また、気を使わせてしまったかもしれない。 申し訳ない。でも、郁也が不思議でならない。気付いてたんだ。私の指先には。 …でも、理由を聞かないのはなんでかな。 …聞かれても、曖昧に濁してしまうだろうけど。私なら。 「…ごめん」 また私の手首を引いた郁也に、ぽつりと謝った。 申し訳ない。切なさが込み上げて来る。 今の郁也は私にとって、優し過ぎた。