見れば、郁也がこちらに視線を向けていた。 なんで、この進路にしたいと思ったのか?…それは、 「…、影響」 「なんの?」 「テ、テレビ」 「…」 「ちょっと何その顔!テレビじゃ悪い?テレビでやってたの!幼稚園教諭についての番組が!」 「…それ見て、やりたいと思ったの?」 「そうだよ」 ぎい、体を傾ければ椅子が唸る。ぎい、ぎい。 音を鳴らす椅子。静かな保健室には、呼吸の音すら曖昧にしか響かない。 ぎい、ぎい。私を乗せた椅子の唸り声だけが、室内で叫んだ。