だというのに。


婚約者選び、とはいっても、そう長々と縁談相手を滞在させるわけにはいかないだろう。
長くて一週間か、そこらだろうか。
つまりその間に、自分が嫁ぐかもしれない相手を選び取らねばならないのだ。


無理だ。


考えるまでもなく、ファイナには結論が出ていた。

きっと今回も無駄足だ。

そしてきっと、これから先もうまくいかないのだ。


なぜならファイナ自身、いくら考えても、誰かと結婚してその誰かとともに暮らしている自分というものが、想像すらできないのだから。



「とりあえず、今日の顔合わせはちゃんとやれ。お前のために相手はわざわざこの屋敷まで来てくれたんだ。そのことを忘れるな」


そう言われてしまえば、何も言えないという事実に。


「…わかってるわよ」


ファイナはドレスの裾をつまむ。


ファイナが身に纏うのは、父と同じ白に近い金髪がよくはえる赤のドレス。
美しく結い上げられた髪も、丁寧に施された化粧も、どれも晴れの日にふさわしい出来栄えだ。


(ただ、ふさわしくないのは、飾られている中の人物ね)


部屋から去っていく父を見送りながら、ファイナは小さく息をついた。