名門・デルファウスト家。


それは、大陸中央部で最も広大な領土を有する帝国・ガルナスの中でも、名門中の名門として知られる大貴族である。


デルファウスト家当主、シャドー・デルファウスト侯爵は、御年三十六歳。
ガルナスでも肥沃な土地を治めている彼の人物は、国の重要な議題を決める議会においても多大な影響を及ぼすほど影響力をもつだけでなく、優れた領主としても国中に知れ渡っている。

祖母は、現国王の母・皇太后。その二代前にも、王家に娘を出している。
王家にも縁戚関係のある、名門貴族。


そんな彼ではあるが、十年前病気で妻をなくすという不幸に見舞われている。

彼には三人の子供がいるが、長姉はすでに他家に嫁いでいる。
公爵家の長男へと、嫁いでいった。

そして今回、次女であるファイナ・デルファウストの婚礼を決めようと、かねてより縁談話をよせられていた人物から数名を選び、屋敷へと招待する運びとなった――。







「よくお似合いですわ、ファイナ様」

「どうも」

「本当、よく似合ってるよお姉さま」

「ありがとね、ウィル」

「とてもきれいだよ、ファイナ。お母様の生き写しだよ」

「…ああそうですか、お父様」


朝食の後、身支度を整えたファイナの部屋には、メイドのルノー、デルファウスト家当主のシャドー、そして長男でありファイナの弟にあたるウィルヘルムが集まっていた。

三者から寄せられた感想に、ファイナはそれぞれに返答した。