「はあ」
部屋に戻るなり、どっと疲れが出た。
令嬢としての振る舞い、礼儀作法、社交的な会話・笑顔。
元来時間をかけて人を好きになる質であるし、もとより社交界を苦手としていたファイナにとっては、一時間少々でもタダなエネルギーを消費した。
(これが五日も続くの…?無理、死んでしまうわ…っ)
ベッドに横たわり、枕に顔をうずめる。
少しだけ癒される。
「お疲れですね、ファイナ様」
「ルノー…」
ベッドの脇に立ってこちらを見下ろすルノーを見上げる。
枕もそうだが、その笑顔には癒される。
思わず気が緩み、つられるように涙腺までも緩んだ。
「ルノー、もうダメだわ。私、死にそう…」
「まだ始まったばかりですよ」
「わかってるけど、どうしようもないじゃない。本当に無理なんだから」
泣き言を言う主の背を、ルノーはそっとなでる。