「初めまして、ファイナ様」



最後は肌の白い、綺麗な男。

ぞっとするほど涼しい声で挨拶の言葉を口にして、温度の低い手で右手をとらえる。



その瞬間から、ファイナは何か、を感じた。


自分でもよくわからないが、何かを感じている自分を感じていた。




「レイズ。レイズ・ゼレシア伯爵です」




そして、唇が触れる。



(あ――)



ファイナは一瞬、眩暈のようなものを感じた。



(何?)



体の芯から何かがのぼってくるような、変な感覚がした。

触れた部分から発熱するような、化学反応の一端になってしまったかのようだ。


正面でずれることなくじっと自分を映す二つの目から、目が逸らせない。




暗い穴の底に落ちてしまう――。




そう思った。