2時前に、招待客はそろったらしい。


部屋の中にいても、機嫌よさげに客人を迎え入れる父の明朗な声が届いてきて、ファイナはますます気が滅入る思いだった。

気分を晴らすために、寝台のそばにある読みかけの本を手に取ろうとすれば、ルノーにすげなく「顔合わせが済むまでおあずけです」と取り上げられた。


ますます気が沈んで、窓の外を憂鬱に眺めていた。


弟のウィルヘルムも父に付き添って客人を迎えに行ってしまった今、つれないルノーと部屋で二人きりのファイナは、準備が整ってしまえば黙って考え事に耽るぐらいしかやることがなかった。



(とりあえず、まずは今日を乗り切ろう)



十二分に考える時間だけが与えられた状況で、ファイナは諦めにも似た気持ちでそう思考にケリをつけた。

どうにもこうにも、考えているだけでは結局埒が明かないのだ。


そうなると、早く顔合わせの時間になってほしいとすら思えた。


いつも通りむすっとしたまま、何を言われても無愛想にさらりと交わしながら、苦痛にも似た時間を我慢しさえすればそれで済んでしまうはずだ。


そこまでたどり着いたファイナは、やっと自分を呼びに来た侍従に、元気よく「わかったわっ」と返事していた。



ルノーから奇異なものを見る目を向けられたのは、言うまでもない。