どくり、駆け出す。心臓が、ざわめく。 無論、悪い意味、で。 どくりどくりと、気持ちが落ち着かなくなる。 「携帯、落とした?」 「え、…それ」 「廊下に落ちてた。友梨のだろ」 「……私、の」 ずきりと痛んだのは自分の心だった。 思ってた以上に、隼人は『普通』に接してきた。 あんなこと、最初から無かったかのように、私とは、付き合ってなんていなかったように。 彼は、『普通』過ぎた。