「あ、ていうか結菜」 「なに?」 「さっき優子が教科書返しに来てたよ。数学の教科書」 「え、借りてきちゃったんだけど。隣の隣の隣まで走ったんだけど、あたし」 「…どんまい」 とりあえずは、過去の時間を失うのも、そうでないのも、 私からすれば、どちらも簡単でしかないんだ。 なら呼吸を辞めるのも、愛を砕くのも、きっと、なによりも簡単なのだろう。