結婚できるの?

それなのに智和は最後まで優しくて、「ありがとう」とまで言ってくれた。

これ以上あと1分でも一緒にいたら、堪え切れず泣いてしまっただろう。

こちらに近づいて来るタクシーが見え始めた。


「タクシー、来たよ。元気でね!」


智和に言われて亜里沙が頭を下げた、そのとき……


「あっ」


小さく声を上げる亜里沙。

どこかで落としたのか、片方のイアリングがないことに気づいたのだ。

約1年前、陽太がプレゼントしてくれた大事なイアリング――。