「はい、これ。心くんにプレゼント」

バサッ・・・

・・・え?

「雑誌・・・?」

「うん、サンプル版、たくさん余ってるから、心くんにあげる」

ミアちゃんは、出版社で働いている。

フリーマガジンも、ミアちゃんの部下の子が担当してて、僕らのことを知ったそうだ。

「僕が、ファッション誌・・・読むの?」

「そうよ。研究しなさい。当分は女の子として過ごすんでしょ?」

「・・・うん、まぁ」

たぶん、しばらく、こうするしかないんだろうな。

「もー、心くん、しっかりしないとー。ルウに捨てられちゃうよ」

え・・・。

それは、嫌・・・かな。

「可愛いな、心くん。ほんとに、女の子みたい」

恥ずかしいです、そんなに見ないでください。

「おともだちになろうよ。ね、心くんの秘密、私、誰にも言わないから」

なんか、複雑です。

初恋の人と、こうして、今、一緒に居ることが。

「すきって・・・」

僕は、言葉にしてみようと思う。

「すきって、例えば、僕が、ミアちゃんをすきになった気持ちみたいなことを言うんだよね」

あれ・・・?

「やだ、心くん、私のこと、好きなの?」

「やー、違う違う!昔だよ、昔。小学校ん時」

「なーんだ、もー。ドキドキするじゃない」

痛い、痛い。

さっきから、バンバン、背中をミアちゃんに叩かれてる。

「心くん」

なんだ・・・?

瞳を、見つめられてる。

「ルウのこと。好きになっちゃったんだね」

男の子が男の子を・・・。

「ダメじゃないよ。心くん、あなたは間違ってない。あなたは生まれ変わって、良かったんだよ」

ふわふわの髪を、僕は、ミアちゃんに撫でられてた。