それからの真理恵は、あの倒れた患者のことと、その家族の慌てぶりが頭から離れなかった。今頃、どうなっているんだろうか。未だに連絡が来ない携帯を見つめながら待ち遠しくしている自分に気付いた。悲しそうな表情を見せた男は笑顔になったのだろうか。だから、もう私には用事が無くなり電話が鳴らないのかも知れない。
真理恵は、それが一番良い事だと思った。でも、それならそれで、お祝いの言葉の一つでも掛けたかったのは事実で、交換した連絡先を開いては閉じたりをさっきからずっと繰り返していた。
河川敷の菜の花が咲き乱れ、辺り一面が黄色に彩られた頃、真理恵の携帯が鳴った。
「やっときた」
真理恵は高く青い空に吸い込まれそうな気持ちで電話に出た。
「お久しぶりです。その節はお世話になりました」
丁寧な口調は、回転寿司でのあの時を回想させた。「こちらこそ、お邪魔してしまってスミマセンでした」
真理恵も丁寧に返事をした。
「あれから容態のほうは如何でしょうか。ご回復されましたか?」
「いいえ。とうとう意識さえ戻らないまま亡くなってしまいました。先日、初七日も実家で済んだそうです」
真理恵は言葉に詰まった。さっきの軽はずみな言葉がこの男の傷を深めたしまった気がして。
「僕はね、葬儀には行ったのですが、初七日には呼ばれなくて、それで電話で聞いたら、初七日も無事に済んだのでお世話になりましたと言われ、それで何だか全てが終わってしまったような気がしたんです。所詮、他人は他人ですよね」
真理恵は、それが一番良い事だと思った。でも、それならそれで、お祝いの言葉の一つでも掛けたかったのは事実で、交換した連絡先を開いては閉じたりをさっきからずっと繰り返していた。
河川敷の菜の花が咲き乱れ、辺り一面が黄色に彩られた頃、真理恵の携帯が鳴った。
「やっときた」
真理恵は高く青い空に吸い込まれそうな気持ちで電話に出た。
「お久しぶりです。その節はお世話になりました」
丁寧な口調は、回転寿司でのあの時を回想させた。「こちらこそ、お邪魔してしまってスミマセンでした」
真理恵も丁寧に返事をした。
「あれから容態のほうは如何でしょうか。ご回復されましたか?」
「いいえ。とうとう意識さえ戻らないまま亡くなってしまいました。先日、初七日も実家で済んだそうです」
真理恵は言葉に詰まった。さっきの軽はずみな言葉がこの男の傷を深めたしまった気がして。
「僕はね、葬儀には行ったのですが、初七日には呼ばれなくて、それで電話で聞いたら、初七日も無事に済んだのでお世話になりましたと言われ、それで何だか全てが終わってしまったような気がしたんです。所詮、他人は他人ですよね」


