「うち、なでしこになるんだから。」

 声色から、絶対なるっという気持ちが伝わってくる。

 もう、こんな話に付き合ってられない。
 その場から立ち去ろうとした。

 しかし・・・

「待って、僕は何人かなでしこに教え子を送った。

 今玉川さんに必要なのは、男子と一緒にサッカーをやることだ。」

「それなら、小学校の時に経験したけど。」

 一度振り返ったが、また歩き出そうとする。


「僕が玉川さんをなでしこ送るから、頼む・・・。」

「うちは、今、なでしこに卒業生を送った名門チームに入ってますから。
 ご心配なく。

 では、練習あるのでこの辺で。」

 ふんと鼻を鳴らして校門を出た。
 偉そうな態度して、珠理、大丈夫か。

――なでしこ送ったって、嘘つけ。
   あんな弱っちいチームの顧問が。――

 本人は気にしてないみたい。
 例えば先生から冷たい仕打ちを受けたらどうしようとか、全然考えてない。


――さあて、うち、なでしこになるんだから。――