相手のプレッシャーはない。

 ただ、あかりの真後ろに交代で入った選手がいる。その近くに梗子がいる。

 珠理は遠くへ蹴る。

 梗子やあかりに渡したら、とんでもないことが起こると思って。

 きれいな放物線を描いて、センターサークルの少し前に落ちた。

 これだけ蹴れれば、中学生の女子ではかなり蹴れている方だ。

 満が取って、そのままドルフィンガールズの攻撃。

 珠理は常に警戒する。


 あれ?
 そのまま遅攻になった?

 あかりと珠理以外は全員攻撃に参加している。

 珠理はペナルティーエリアラインの外に出て、あかりはセンターラインの少し前に立っている。

「カウンターにね、気を付けて。」

「もちろん。」

 味方はパス回しをして、時間を稼いでいるように思える。

 まだ後半の十六分。
 まだ、十分はある。
  
 フィールドプレーヤーは、このままゲームを終わらせたいと思っているのか。

 珠理はもう一点とって、勝負を決定づけてほしいと思っている。

「もう一点取ろう。」

「そうだな。」

 珠理の声はあかりにしか伝わらない。