〔完〕 うち、なでしこになるんだから

 ぴぃー~♪

 試合再開。

 緊張が走る。


――大丈夫、基本に真面目に!――

 バンバンFC時代から叩き込まれてる、ゴールキーパーの基本中の基本。

 これを忠実にこなすように、いつも言われている。

 もちろん、中には基本だけでは対応できないこともあるが、基本をなくして特殊なケースに対応できない。


 常に、ボールに対して適切な位置を取る。

 いつでもシュートを止められる準備をする。
 シュートする直前に準備するのは絶対ダメ。

 セービングは最後の手段。

 常にコーチングを。コーチングとは、簡単に言えばゴールキーパーが味方に指示を出すこと。

 コーチングがうまければ、ゴールキーパーがシュートを止めるような場面をゼロに抑えられることだってできる。


「タワー、キョーコ、もう少し前へ出ていいよ。」

 これを聴いて、二人は二・三メートル前へ上がった。
 珠理は、ペナルティーエリアラインの線上に立つ。

 笛が鳴った瞬間緊張してたが、こうして声を出しているうちに落ち着いてきた。