〔完〕 うち、なでしこになるんだから

 爽にパス。

 爽はしっかり受け取る。顔をあげる。ゴールまでの距離は、約十メートル。

 未撫はフェイクをかけて、相手ディフェンダーを振り切り、爽の周りを走って、ボールを貰う。

 トップスピードでドリブルし、ゴールに迫る。


 ゴールキーパーが出てきた。

 未撫は動じない。

 横へ一歩分ボールを動かす。キーパーは対応が遅れている。
 その隙にシュート。
 シュート打った時に、キーパーは未撫の真正面にいた。

 ボールはゴールキーパーの頭上を越し、その勢いでどんどん高く上がる。

 誰もそのボールを止められない。

 止められるとしたら、ゴールの柱とバーだけ。

 すみれと爽が走ってくる。

 もし入らなかったら、シュートするつもりだ。

 あっ、もしかしたら入らないかも。

 柱の前すれすれを通るかも。


――入ってくれ!――

 珠理の願いむなしく、ゴールの上のバーに当たった。