〔完〕 うち、なでしこになるんだから

「それと、珠理から何か言いたいことがあるみたいだ。」

 指名された本人は驚く。

「えっ、えっ、えっ?」

 あまりにも大げさに驚いているから、その場にいた者はみんな笑いをこらえている。
 珠理本人は普通に驚いているだけだ。

「ほら、謝罪と決意。」

 小声で監督は言う。
 でも、いきなり言われても困る。

 監督はいったい、何をしたいのだろうか?


――あっ、そうか!――


 監督が求めていることがだいたい分かった。

 あとは、言葉に表すだけだが・・・。難しいことだ。

 それでも、躊躇している暇はない。

 慌てて立ち上がり、

「ええぇっと・・・。

 今まで・・・ずっと、自分のことで悩んでて、それがプレーに出て、みんなに迷惑かけて・・・、

 ごめんなさい。」

 反射で皆が向いている方とは逆向きに体を回転して、頭を下げる。

 “ごめんなさい”と言ったら、なんだか頭がすっきりした。