〔完〕 うち、なでしこになるんだから

「お前は今、お前の心に負けている。
 だけど、大丈夫。
 勝ちたいと思えば勝つ。

 いつも言っているだろう。
 試合に勝ちたいと、より強く願っている方が勝つって。」

 確かに、負けるかもと思ったから、再三ピンチを受けた。

 ピンチのうちの一つは失点してもおかしかくなかった。
 でも、結果として今は引き分け。
 それは、勝ちたいと心のどこかで叫んでいたからかもしれない。

「はい。」

 ほんの少しだけ、珠理は前を向いた。
 ほんの少しだけ、冷や汗と体の震えが収まった。


「思い出せ。お前はいつも練習をがんばっている。
 どんなに苦しくても、決して弱音を吐かない強い心を持っている。
 こんなに強い心持ったやつは見たことないよ。」

 そう言われて珠理は照れる。

「そんな珠理の心が、こんなことで弱くなっていいのか。」

 眠りから目覚めるような感触がする。


――うちは勝ちたいんだ、この試合に勝ちたいんだ。
   いや、弱い自分に勝ちたいんだ!!――