〔完〕 うち、なでしこになるんだから

「お前が将来で悩んでいるのは知っている。」

 珠理の心に鋭い矢が刺さる。
 こうして他人に指摘されると、嫌というか、本心を見透かされて驚いたり、痛く感じたり・・・

「だが、ここで負けてどうするんだ!」

 まるで平手打ちを食らったような心地がする。

 もちろん、監督は選手に殴るようなことはしない。しないけど、殴られたような心地がする。

 珠理は目をいっぱいに広げ、何も話せない状態。


「このチームは今まで、卒業生の中に何人か、なでしこに選ばれた。
 皆、このチームにいたことは一緒だが、卒業後はどういう道をたどったかは、人それぞれだ。特徴や上手い下手も皆違う。
 でも、共通してることがある。
 どんな時でも己の心に勝ち続けてた。」

 監督は一呼吸して、今まで巣立っていった選手を思い出す。

 あいつは上手かった、あいつは下手でも一生懸命だった。
 あいつは・・・そう、なでしこに選ばれたんだ。

 色んな思い出がよみがえる。

 でも、今は珠理を叱ることに集中。