エレーナは渡されたハンカチを受け取り、そっとそれを広げる。

「あれ?」

 ハンカチに刺繍されている紋章を見て手を止める。
 この紋章はエレーナでも知っているはずだ。

 オレは彼女の両脇に手を差し入れ持ち上げると、そのまま肩に乗せて担ぎ、自分の部屋へ走り出した。
 突然のことに驚いているのか彼女は暴れない。

 王宮内にある自分の部屋へ彼女を連れ込み、ベッドの上に降ろす。
 彼女は少し口をあけて驚いた表情のまま固まっていた。

「エレーナ・・・すまない・・・」

 柔らかな唇に自分の唇を合わせ、後は感情のままむさぼるように彼女と体を重ねる。
 今まで我慢していた分、彼女の柔らかい体に触れ、理性はすぐにすっとんでいった。

 初めてのエレーナの体には負担になるとわかっていても、何度も体を重ねた。
 そして、やっと満足出来た時には、エレーナは意識を失っていた。

 外はもう夜が明けるのか、少しだけ空が明るい。

 彼女は体を重ねても抵抗しなかった。
 それどころか愛してもいない男を受け入れてくれたのだ。

 情熱をぶつけ満足した体をベッドから起こし、寒くないように上掛けをエレーナに掛ける。
 熟睡しきっている表情は優しく、愛おしい。

 服に袖を通す。

 夜が明ければ教会で婚姻証明書を発行してくれる。
 後は彼女を説得してそれにサインしてもらうだけだ。
 そうすれば彼女はオレの正式な妻となる。

 オレは部屋に彼女を残し、教会へと向かった。

 証明書をもらって急いで部屋に戻ると、ベッドの上に彼女はいなかった。
 寮へと戻ってしまったのだ。

 証明書にサインしてもらわなければ、彼女を妻に出来ない。
 身を翻すように彼女の寮へ向かう。