全く見ず知らずの男の子に 抱きしめられている… …こんな経験は初めてだ。 心の隅で驚きながら、それでも その行為に抵抗する気にはなれなかった。 むしろ、この手慣れた感じの腕が 居心地よくホッとしていた。 私、誰かにこうして欲しかったんだ。 『…大丈夫だよ。 早く泣いちゃいな。』 落ち着いた優しい声に包まれる。 その言葉を聞いた瞬間に 塞き止めていた防波堤が 崩壊したように涙と嗚咽が溢れだした。 やっぱり5年間は長かったんだ。