「……どうしてここに?しかもそんなに息切れして……」



1メートルほどの距離まで近づくと、彼女は瞳をぱちくりとして僕を見上げる。



「これを……椿さんに見て欲しくて」



ーーむしろ見せなきゃいけないと思って。


汗ばむ手で握りしめたから少しよれてしまった一枚のカード。

深呼吸をして息を何とか整え、改めて向き合う。



「私に……?」

「『Ring』の、歌詞カードだよ」

「えっ……」



渡すと彼女はそれに視線を落とした。

わずかに手が震えているのが分かる。



「……椿さんは、彼がどれだけ自分のことを想ってくれていたか分からない、って言ったよね」



彼女の目がゆっくりと文字を追っていくーー。